Profit and Loss Statement, Income Statement
企業或いは法人における一定期間の経営成績を示す表であり,大きくは売上と費用,そしてその差である利益から構成される。貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書と合わせて財務三表と呼ばれる。細かい点は省略するが,貸借対照表はある時点における企業の持つ資産とその調達方法(元手)を示し,キャッシュ・フロー計算書は一定期間の現金の動きを示していると考えてよい。企業は売上を上げ,その活動に要した費用を支払い,結果として利益を確保して,次なる活動の資産となる。また,通常,売上を得ることができる時期と支払いの時期に差があるために,この期間手元の現金がつきないように現金の動きに常に注意を払う必要がある。このように,財務三表は密接に関係しており,企業の経営をそれぞれ異なる切り口で見たものである。
損益計算書を通常の医療機関を想定して概要を説明する。大きくは医療収益(売上),医業費用,そしてこれらの差分として医業利益(収支)から構成されると考えることができる。医業収益は通常,入院収益,外来収益,その他収益(例えば自由診療の部分など),また医業費用は,人件費,薬品材料費,減価償却費,各種経費と分けることができる。では損益計算書はどのようにして経営改善活動に活かすことができるのか,その事例をいくつか紹介する。
一つは「課題の明確化」である。経営改善活動に出発点は,利益=収益-費用という簡単な方程式であり,利益を改善するには収益を増加させるか費用を削減するかしか存在しない。更に収益=患者数×患者単価という分解であることを考慮すれば,収益を増加させるには,数を増やすか単価を上げるかしかない。このように一つ一つ分解することにより,例えば他病院と比較する,或いは過去と比較することにより自院の課題を突き止めることができる。
次に「損益分岐点を理解する」ことである。上記で費用を人件費,薬品材料費などと項目別に分解したが,費用は大きくは売上の増加に伴い上昇する変動費と,売上に関係なく一定である固定費に分けることができる。細かな計算方法は省略するが,現在の固定費を前提に,売上に対する変動費率を加味すると,黒字になるためにはどの程度の収益が必要なのか,この金額が損益分岐点と言われるものである。固定費を下げ,変動比率を下げることで損益分析点を下げることができ,経営に余裕が生まれるわけである。尚,収益-変動費=限界利益と言われるが,限界利益も大事な指標である。限界利益でマイナスということは(固定費を加味するまでもなく),その事業活動は行えば行うほど赤字が蓄積することを意味しており,利益を優先させるならば,即中止すべき活動であるということができる。収益が包括となっている中で,急変対応などで多くの医療資源を投入する場合などは限界利益レベルで赤字となってしまうことも多い。
最後に部門別原価計算である。病院全体の損益計算書を例えば診療科など部門別に分解することである。通常,医薬品や診療材料費,或いは部門に直接所属している人件費などは部門別に分解,配布しやすいが,中央部門や間接費用共有費用は,患者数割合などある一定のルールや前提条件を用いて部門別に配布することとなる。これら共通費用の配布は組織の理解を得ることが難しいなど必ずしも容易ではない面もあるが,病院全体としてどんぶり勘定になりがちな財務状況を分解し,「みえる化」するという点では大きな意義があろう。