医師の働き方改革

Physician’s work style reforms

 2018年7月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が公布され,労働基準法や労働安全衛生法など,関連する様々な法律が改正されることとなった。この改正の要点として「罰則つきの時間外労働の上限規制」が導入され,医師を含む一部の事業・業務については2024年4月1日から施行される。医師の働き方改革が求められる背景として,医師の労働が長時間であること,医師に対する労務管理が不十分であること,そして業務が医師に集中していることがあげられている。これまで我が国の医療が医師の長時間労働により支えられてきたことを踏まえ,今後,医療ニーズの変化や医療の高度化,少子化に伴う医療の担い手の減少が進む中で,医師個人に対する負担の増加を食い止める方策が求められる。

 医師の働き方改革に向けた対策として,長時間労働を生み出す構造的な問題への取り組みが求められる。具体的には,地域医療構想・外来機能の明確化を含む医療施設の最適配置の推進,地域間・診療科間の医師偏在の是正,そして国民の理解と協力に基づく適切な受診の推進があげられる。そのためには,普及や啓発に向けた行政による支援に加え,医療機関内での医師の働き方改革の推進が重要となる。医療機関内での医師の働き方改革の推進として,適切な労務管理の推進およびタスクシフト/シェアの推進が必要となる。まず適切な労務管理の推進として,医師の時間外労働の上限規制と健康確保措置への対応があげられる。医師の時間外労働の上限規制に向けた医療機関に適用される水準として,一般労働者と同程度とする「A水準(年間960時間)」,主に救急医療などの政策医療を担当する「B水準(年間1860時間)」,大学病院など医師を地域の医療機関へ派遣する機能をもつ「連携B水準(年間1860時間)」,一定の期間集中して技能向上のための長時間労働を必要とする臨床研修医や専攻医を対象とする「C水準(年間1860時間)」が設けられる。またこれらの水準設定に加え,他業種にはない健康確保措置として健康状態を医師が確認する面接指導や,連続勤務時間の制限および勤務間に一定の休息時間を義務付ける勤務間インターバルなどの確保を追加的に求める仕組みとなっている。つづいてタスクシフト/シェアの推進として,医療機関は医師以外の看護師,医療従事者,そして事務職を含めた業務範囲の拡大・明確化を推し進め,各職種の専門性を活かした業務改善に向けての組織運営・管理に努める必要がある。

 医療機関における労務管理の徹底,労働時間の短縮,そしてタスクシフト/シェアの推進を中心とした対策により,医師の健康確保に加え,全ての医療専門職が自らの能力を活かし,より能動的に対応できるようにすることで,質・安全が確保された医療を持続可能な形で患者に提供できることを目指してゆく必要がある。

【関連用語】

労務管理,タスクシフト/シェア