Operating Expense
病院の財務会計は病院会計準則に基づき作成されている。病院会計準則は,総則に続いて,貸借対照表原則,損益計算書原則,キャッシュ・フロー計算書原則,附属明細表原則から成り立っており,当然のことながら,損益計算書には,収入にあたる医業収益と支出にあたる医業費用,医業外費用によって構成されている。
収益を上げるには,費用がかかる。病院が営業を続けるには適切な利益を出すことが必要であり,それには医業費用を適切な範囲に抑えなければならない。病院会計準則によれば,医業費用とは,材料費,給与費,委託費,設備関係費,研究研修費,経費,控除対象外消費税等負担額,本部費配賦額を指す。具体的には,材料費には医薬品費,給食材料費,診療材料費,医療消耗器具備品費など,給与費には,給与,賞与,賞与引当金繰入金,退職給付費用,法定福利費など,委託費には,検査委託費,給食委託費,寝具委託費,医事委託費,清掃委託費,保守委託費,その他委託費など,設備関係費には,減価償却費,機器賃借料,地代家賃,修繕費,固定資産税,機器保守費,機器設備保険料,車両関係費など,研究研修費には,研究費,研修費のことを指している。
医業費用の中でウェートを占めるものは,給与(人件費)と材料費である。材料費は医業収入に連動する性格がある。すなわち,売り上げが増加すれば材料費も増える傾向にある。しかし,近年高額医薬品や高額医療材料が増加し,材料費の管理がより重要となってきている。人件費率は低いほど経営は楽であるが,医療内容の低下や職員の不満を招きやすい。
キャッシュ・フロー計算書とは,キャッシュの増減を表す。損益計算書の収益は発生主義により未収金であっても収益計上されている。キャッシュ・フロー計算書での収入とは現預金等として入金されたものを指す。対象とする資金の範囲は現金,および現金同等物である。現金同等物とは,換金可能であり,リスクが少ない短期投資を指す。業務活動によるCF計算書が黒字の場合健全な経営である。業務活動が赤字の場合,本業によるキャッシュが減少している不健全な状態といえる。その場合黒字,赤字だけでなく,投資活動の状況も見る必要がある。すなわち,投資は事業継続のため必要な設備投資もあるが,投資が過大になれば危険水域となる。
厳しい社会情勢の中で,医療機関は常にキャッシュ・フローを把握し,自院の内部に現金を確保することによって全面的に金融機関に頼らない経営に努めることが必要である。CFを改善し,経営を安定させるには,当たり前のことであるが現金を増やし,支払いを抑えることである。そのためには,月次の帳簿管理により,キャッシュ・フローをきちんと把握して現状を把握することである。キャッシュ・フロー計算書の重要性が増している。損益計算書で利益が出たとしても,資金繰りが回らなければ企業は黒字倒産することになるからである。