Governance
ガバナンスという言葉は,政府のガバナンスである「パブリックガバナンス」と,企業を対象にした「コーポレートガバナンス」に分けられる。ここで医療・介護のガバナンスを考えるにあたっても,同じくマクロなしくみである医療・介護制度自体のガバナンスと,医療や介護を提供するミクロな組織に関する株式会社のコーポレートガバナンスあるいは(非営利)組織のガバナンスという視点がある。
ここでは,病院のあり方という観点から,株式会社形態のガバナンスと非営利組織のガバナンスという比較をしてみよう。
コーポレート(企業)あるいは組織のガバナンスは,株式会社あるいは組織において企業(組織)経営を常時監視しつつ,必要に応じて経営体制の刷新を行ない,それによって不良企業(組織)の発生を防止していくためのメカニズムである。コーポレートガバナンスには機関投資家,取締役会,公的機関,業界団体が関与する。このなかで,近年,米国での状況が示すように,強さを増しているものが機関投資家である。これは,経営学者のドラッカーが指摘しているように,カルパースといった年金基金が,大株主として企業経営に発言するようになったことを指す。もちろん,日本ではこの動きはまだまださほどさかんではない。
通常の病院などの非営利組織の場合には,機関投資家は不在であるし,取締役会の代わりに理事会がその役目を果たすが,むしろ業界団体,他の組織といった同業からの見方といったものの影響が大きい。
理事はその法人を代表すると規定されているが,理事が複数いる場合など,理事のあいだで不統一があったり,責任の所在が不明確になるおそれがあるため,理事のうち特定の者のみが代表権をもつようにしている。そうした集中された代表権をもつ理事は,理事長とよばれる。日常の軽易な業務については理事長が専決し,それを理事会に報告する。また,理事会が法人の業務の基本的事項を決定する意思決定機関として位置づけられる。
一方,評議員および評議員会は,理事長の諮問機関として位置づけられる。近年,機能強化が言われており,理事会の独善的運営をチェックするなど,法人の業務を公正に行うための重要な機関である。
さらに,病院などの日々のオペレーションについての透明性,監査,管理(責任)についてガバナンスという表現を使うこともある。
近年急速に重要性を増している考え方である。