Unified Medical Identification Number
現在,保険医療福祉サービス利用に際し,特に医療機関受療に関して,医療の高度化・専門化ならびに機能分化の潮流に乗って,単一ではなく複数の施設を利用することが普通になった。受療者(患者)の立場にたった場合,その保健医療サービスを効率的に受けるため,また複数施設で受けた医療内容・結果が,どの診療機関においても統一的に可視化・共有でき,それを通じて的確かつ質の高い,継続的連携的医療(continuity of care)を受けることができるために,個々の患者に関する保険情報やデータをユニークIDのもとに一括把握できるシステムが求められる。国民健康や疫学推進(population health)の観点から見ても,多くの受療者から得られる多量多彩なデータ(big data)を活用し,有益な知見を得る研究が可能となるためには,個々のデータを年齢性別住地等の情報と紐付けた形で得る事が必須となるが,このためにも患者一人ひとりを健康情報に関連してまとめ得るユニークIDの存在が前提となることは容易に理解できる。すなわち,患者本位の観点からも,population healthの観点からも,こうして健康情報に関連した,一意的な個人識別子が求められているのである。
2016年より稼働しているマイナンバー制度はすべての国民に一意の背番号を符号し,これをもって税務に宛てる目的で導入されたものであるが,このユニーク番号で,機微な情報(sensitive information)を多く含む医療・健康情報が呼び出されるのはいかにも不適切であるため,マイナンバーと紐付けはするが,個人情報秘匿性を十分に考慮した形で運用される,別のIDが設置されるべきとされた。すなわちこれが,“医療等ID”と呼ばれるものであり,2020年度よりの本格運用を目指して,国としてその実現に向けて動き出している(2016年6月2日付「日本再興戦略改訂2016」の閣議決定)。まずは2017年度中にマイナンバーカードの提示によって健康保険証の確認作業ができる仕組みが,支払基金・国保中央会共同運営の紐付適合ナンバー(医療等ID;この識別子は医療機関や患者個人にも知らされない,“見えない番号”である)を通じて行われることが計画されている。さらに段階的にこの“見えない識別子”と地域医療ネットワークで利用されている一意的患者割り付け番号との紐付け,などによって,どの医療機関や検査機関のデータであっても的確な患者名寄せが行われ,照会・受診機関での閲覧,利用が出来るような仕組みを構築(医療情報の一次利用としての共有),平行して,個人特定性を可能な限り排除した形で集積,疫学的元データとして利用(医療情報の二次利用)できるための,別の識別子との紐付け作業も進められる予定である。