Referral Document; Continuity of Care Record
20世紀後半以来,医療の高度化と専門分化の中で,患者の受ける医療サービス(healthcare)が複数の専門的かつ小範囲的な医療者(healthcare provider)によって担われるようになり,ケアの分断化(fragentation)が生じるに至った。さらに高度医療/先進医療/急性期医療を担う病院群,慢性期療養を担う病院群ならびに外来診療を担当するクリニックの機能分化,役割分担化は,医療経済の面からも動かしがたい訳であるから,当然ながら各階層の医療機関同士が情報を共有しつつ,ケアを切れ目なく(seamlessに)引き継ぎあう,すなわちcontinuity of careを実現するための仕組みの存在が前提となる。その重要な一要素が診療情報提供書,という事になる。
診療情報提供書の電子化フォーマットについては,厚労省標準規格が示されている(2010年;内容はhttp://www.hl7.jp/intro/std/HL7J-CDA-005.pdf)。紹介目的の記載とともに,主訴や主疾患,現病歴と既往歴,(入院中)経過,主要検査所見,処方,治療計画などを項目として記載することを定め,これらの記載形式はHL7とISOの合同国際標準規格であるCDA R2(ClinicalDocument Architecture Release 2)でcode化されることとしている。
診療情報提供書作成の保険算定に関しては,従来紙への印刷と署名ないし捺印での発行が原則とされていたが,2016年より電子署名がなされ,セキュアなネットワークによって電送するやり方も認められ,従来の診療情報提供加算にさらに30点が付加されることとなった。
退院時の診療情報提供は,退院時のサマリーをもって行う事が理論的に可能であり,continuity of careを目的とした退院時要約をcontinuity of care record(CCR)と呼ぶ。退院時サマリーには各専門科での特殊な治療の覚書や専門医認定のための要約など,種々の目的で作成されるものがあるが,CCRはまさしく退院時の診療情報提供書と定義されるといっても過言ではない。現在,上記の厚労省標準・診療情報提供書のコンテンツとそのCDA構造を参照しつつ,CCRの標準規格化に向けた取組みが行われている(医療情報学会・診療情報管理学会・POS医療学会合同委員会)。
退院後短時日でサマリーを作成し,次のhealthcare providerに情報提供することが必要であり,診療情報管理加算も90%以上の退院患者においてサマリーを2週間以内に完成できていることが算定要件となっている。迅速作成と作成医師の負担軽減のために,上記の診療情報提供書に規定された各項目のうち,できる限り多くを電子カルテから自動的に流し込むなどのプログラム上の工夫が必要である。一方で,患者を統体的に把握し(patient-centeredness of care),それを次の医療者に伝承すべく,プロブレムリスト(主病名ならびに既往歴)の抽出については担当医ないし病院での総合医療担当者が責任をもって行い伝達することが求められる。