Continuity of Care
Continuity of careという概念は,20世紀後半以降急速に進んだ医療の高度化と専門分化の中で,患者の受ける医療サービス(healthcare)が複数の専門的かつ小範囲的な医療者(healthcare provider)によって担われるようになった結果,ケアの分断化(fragmentation)が生じ,患者(healthcare taker)の統体的(conprehensive)かつ継続的な管理(continuous and coordinated management)がいきおい疎かになった中で,叫ばれるようになったものである。
昔ながらに単独の医療者によって患者ケアが出来るのであれば,そのシングルな継続性のみが問われる事になるが,受療可能となっている高度な医療・ケアを誰もが受けたい,という患者側の現代的ニーズからしてもそれは不可能であり,自然,この課題は複数医療施設,複数医療者,それも複数職能(医師・看護師・薬剤師・技師,等)の連携と協働によって初めて実現することなり,ひいては医療の安全と質の向上に関わることにもなるのである。
Continuityという言葉には時系列的な意味合いが強いが,医療におけるcontinuity概念には,複数の健康問題(プロブレム)を総合的に眺め,重症度やリスクの観点等から適時的に管理する特性(continuum of care)も含まれているというべきである。この観点からcoordination of care,integration of services,seamless careといった名辞も,ほぼ同義的に使われてきている。
医療政策の観点からは,高度医療/急性期医療と慢性期療養,および日常外来医療や在宅医療とに機能分化した医療提供のあり方に関して,いかに効率的に医療資源を分配し,かつ,先のcontinuityを達成できるかが問われる事となる。
2005年来の国の構想は,かかりつけ医(慢性期療養ならびに外来診療を担う医師)をハブとして,必要に応じた他階層への照会・紹介や転送,さらにはリハビリ機関や介護施設利用の指示などを担わせる方向性である。急性期病院―慢性期療養リハ病院―クリニックにおいて共通の診療パスを稼働させる取組み(地域連携パス)の適用も一つの有効な連携のツールになるが,一般的に,continuity of careを有効に機能させるためには,かかりつけ医を担う医師が真の意味で家庭医的な素養を持ち,患者をgeneralに診療できる(patient-centeredness of careを実践できる)か,ということ,ならびに,各階層の医療機関において,適時的かつ簡潔でわかりやすいサマリー(continuity of care record)を,最新(ないし直近)の形で,いかに適切に双方向性共有できるかどうか,が鍵となろう。