Community Medical Cooperation System
地域の医療資源の実情などに応じて,地域内の各医療機関等の役割を明確化し,機能分化を推進することにより病病連携,病診連携を円滑にし「地域完結型の医療」を提供すことを目的とした取り組みで,2007(平成19)年4月に施行された第5次医療法改正により4疾病(がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病)・5事業(救急医療,周産期医療,小児医療,へき地医療,災害医療)について,必要な医療機能(目標,求められる体制等)及びそれらを担う医療機関・施設の具体的名称を医療計画に掲載することが義務付けられるようになり,このうち4疾病については発生から診断,治療,リハビリまでを診療ガイドラインに沿って作成する一連の地域診療計画(地域医療連携パス)により医療施設間における診療情報・治療計画の共有が求められた。(2013年には精神科疾患を加えた5疾病5事業となった)
さらに改正医療法で複数の参加法人(非営利法人に限る)が参画し,統一的に地域医療を推進する法人である「地域医療連携推進法人」制度の創設が盛り込まれた。また2009(平成21)年にIT戦略本部が発表した「i-Japan戦略2015」にも地域医療連携の実現が明記されている。しかしながら,各医療機関での情報の伝達,共有する手段が脆弱であったため,ネットワーク回線を利用した地域医療ネットワークシステムを構築し地域連携を円滑に運用する地域が増えてきており,2015年現在全国で207の地域で運用されている。代表的なものに「あじさいネット」や「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)」などがある。厚生労働省も「医療分野のICT化施策」において医療情報連携ネットワークの普及促進により,医療資源を有効に活用し,より質の高い医療提供体制の実現を目指しているが,課題としては,医療機関の電子カルテ普及率の低さ,コストの問題,セキュリティの確保,標準化等があり,これらの課題に対して国は,地域医療の中核的な役割を期待される400床以上の一般病院の電子カルテ普及率を2020年に90%に引き上げ,資金についても地域医療介護総合確保基金による支援策,保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI:Healthcare Public Key Infrastructure)の普及によるセキュリティ確保,IHE(Integrating the Healthcare)などの国際標準規格に準拠した標準化の推進を盛り込んでいる。また地域医療連携情報ネットワークは,単一ベンダーにより提供されていることが多く,ネットワーク間の接続の問題などがあり普及には課題を残している。