バリアンス

Variance

 標準化や医療の質改善を図ることを目的として,収集される情報がバリアンスである。計画した診療・ケアの提供(プロセス)が行われなかったり,期待していた成果(アウトカム)通りには至らなかったりした状態がバリアンスである。

 バリアンスには「ポジティブ(正)なバリアンス」と「ネガティブ(負)なバリアンス」がある。ポジティブなバリアンスは,患者の経過が良好で,タスクが設定日より早く行われたり,あるいは不要になったりした状態,アウトカムが予定より早く達成された状態である。一方,ネガティブなバリアンスは,タスクの変更や遅延が生じたり,実施がなされなかったりした状態,アウトカムが未達成・遅延したときの状態である。

 バリアンスは,変動(パスの診療・ケア計画を変更することなく継続使用が可能),逸脱(パスの診療・ケア計画の一部を変更することによって継続使用が可能),脱落(パスの診療・ケア計画に適応させることができず使用中止)に分類することができる。
バリアンスの発生要因は,一般的に,(1)患者・家族要因(患者の身体・精神的な状態,患者・家族の意向・意思など),(2)スタッフ要因(指示出し,指示受け,指示の実施に伴うエラーや遵守の怠り等),(3)システム要因(医療の提供体制,設備・器具,予約のシステム等),(4)地域・社会要因(地域の受け皿,退院時の送迎等)に分類される。

 PDCAサイクルをまわすためには,バリアンス分析を通じて,パスを改訂することが必要不可欠である。診療・ケア計画を作成し,パスに展開するのがPlan,その計画を実行するのがDo,バリアンス分析を通じて実行状況や実行したことによる成果を評価し,成功要因・失敗要因を分析するのがCheck,Checkの結果に基づき,必要に応じてパスの見直しを行い,改訂するのがActである。

 バリアンス分析の際,パス通りにいかないものを全てバリアンスとして収集した場合(オールバリアンス方式),収集や分析に非常に時間がかかり,負担が大きくなる。そこで,標準化を図りたい診療・ケア行為,アウトカムに大きな影響を与えるタスクや重要なアウトカムをバリアンスの指標として設定し,収集したほうが,効率化や改善が図られやすくなる。

【関連用語】

PDCA サイクル,クリティカル・クリニカルパス