クリニカルラダー

Clinical Ladder

 臨床実践に必要な看護師の能力を段階的に示したシステムの一つで1970年代から米国で導入されている。パトリシア・ベナー(Patricia Benner)のドレイファスモデル(Dreyfus Model)を参照とした「初心者から達人へ(From Novice to Expert)」という論文を基に,看護師のレベルを5段階(初心者レベル:novice,新人レベル:advanced beginner,一人前レベル:competent,中堅レベル:proficient,達人レベル:expert)に分け,段階別に目標が設けられている。わが国では,1980年代より施設における看護師教育のシステムの一つとして看護師の人材育成,能力開発や評価などに活用されている。

 看護師教育については,1992年公布の看護師等の人材確保の促進に関する法律で,「看護師等の責務として研修を受ける等自ら進んでその能力の開発及び向上を図るよう努めなければならない,病院等の開設者の責務についても看護師等が自ら研修を受ける機会を確保できるようにするために必要な配慮その他の措置を講ずるよう努めなければならない」と明記されている。また,看護職員生涯教育検討会報告書(厚生労働省,1992年)では,生涯教育の体系化及び推進方策が示されている。さらに,生涯に渡って自己の能力開発を務めるよう2010年には保健師助産師看護師法および看護師等の人材確保の促進に関する法律で,「看護職者は免許を受けた後も臨床研修等を受け,その資質の向上に努めなければならない,病院等の開設者は,新人看護師の臨床研修の実施や研修を受ける機会を確保できるよう必要な配慮を明記すること」と示されている。日本看護協会は2000年に継続教育の基準を公表しキャリア開発についても定義を行っている。キャリア開発においては,看護師の管理的な能力,専門職としての知識や技術習得を段階的に示したキャリアラダーが一つの方法として活用されている。また,2002年度に「ジェネラリストのための標準クリニカルラダー」を開発している。各施設はこのような方針や概念を採り入れ,臨床の場での人材育成,看護実践能力の開発や,評価などのシステムとしてクリニカルラダーを導入し実行している。

 クリニカルラダーは,施設の理念や特徴を踏まえて各施設で作成されている。施設が目指す臨床実践能力の要素とその習熟段階(レベル)を表し,各段階における具体的な行動目標の到達度によって看護師の能力が客観的に示され,看護師本人も能力段階を確認できる。日本看護協会は2016年5月に「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」を公表した。病院の他に介護施設,訪問看護ステーション等でも活用されることをねらいの一つとしており,看護実践能力の4つの力(ニーズをとらえる力,ケアする力,協働する力,意思決定を支える力)と5つの習熟段階で構成されている。

【関連用語】

看護師教育,日本看護協会