Universal Health Coverage
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage : UHC)とは、「全ての人々が、適切な予防、治療、リハビリ、緩和ケア等の、全ての範囲の必要な保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指す。健康は、人権であり、特権ではない。人種、性別、年齢、能力、富や市民権に関わらず、全ての人々が適切な保健医療サービスを受けることができることが求められる。
UHCは、保健医療への財務的なことだけではない。保健医療の提供システム、専門職の人的資源、施設設備や通信ネットワーク、技術、情報システム、質保証のメカニズム、統治と法制度といった、保健医療システムの全ての要素を含む。また、個人の治療のみならず、集団ベースのサービスも、UHCを構成要素である。公衆衛生キャンペーン、水へのフッ素の添加、蚊の制御なども含む。
保健医療の資金源は、政府の予算、家庭や職場による強制的な保険料、あるいは自発的な保険料など、様々である。集められた資金は、今まで受けられなかった人々の医療をカバーしたり、今まで受けられなかった保健医療サービスをカバーしたり、患者の自己負担分をより大きくカバーできるようになる。UHCにおけるカバレッジのこれら3軸の各軸をどの程度に拡充していくかは、それぞれの間でトレードオフの関係があり、政策として、財源のあり方とともに選択していかねばならない。
UHCは、2015年の国連総会で定められた、2016年から2030年までの国際目標である「持続可能な開発目標Sustainable Development Goals: SDGs)」のゴール3(健康と福祉)の中で、達成目標の1つとして位置づけられている。SDGsは、経済、社会、環境の各次元でバランスをとりつつ持続可能な開発を図る総合的な目標である。例えば、UHCの達成を目指すことにより、健康に関連する他の目標の達成に繋がってくる。健康であれば、子供たちは学ぶことができ、成人は働き生計を立てることができ、長期の経済発展の基盤となる。即ち、健康であれば、家庭、コミュニティおよび経済が、潜在力を発揮できるようになる。