Medical Expenses Combined with Treatment Outside Insurance Coverage
現物給付制度を旨とするわが国の健康保険法の下では原則,混合診療は禁止とされている。そのため「保険がきく」ものと「保険がきかない」ものを併用すると,すべて自費診療になってしまう。しかし,その一方で「混合診療禁止についての明文上の法的根拠はない」とする判例も散見される。そこで国はこれまでの特定療養費制度を改め,保険外併用療養費制度を創設した。というのも従前の特定療養費制度では,必ずしも高度ではない先進技術や国内未承認薬などは対象となっておらず,保険診療との併用が認められていなかったからである。保険外併用療養費は「評価療養」および「選定療養」からなり,前者は保険導入を前提とした先進医療や医薬品・医療機器を指す。より具体的には,先進医療,医薬品・医療機器・再生医療等製品の治療に係わる診療,薬事承認後で保険収載前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の使用,適応外の医薬品・医療機器・再生医療等製品の使用の10種類。たとえば先進医療はがんの重粒子治療や家族性アルツハイマーの遺伝子診断など,厚生労働大臣が定める高度な医療技術のことをいう。2023年2月現在,86種類の先進医療が認められている。一方,後者の選定療養は保険導入を前提としない差額ベッド代や予約料をいう。より厳密には,特別の療養環境(差額ベッド),歯科の金合金,予約診療,時間外診療,大病院の初診・再診,制限回数を超える医療行為等の10種類であり,内容も明確化されている。例えば,差額ベッド代は,(1) 特別の療養環境に係る一の病室の病床数は4床以下であること,(2) 病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上であること,(3) 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えていること,(4) 特別の療養環境として適切な設備を有することが要件となっている。また,「予約診療」に関しては,夜間,休日又,深夜であっても差し支えないと明記されている。さらに,医科点数表等の規程回数を超えた患者の不安を軽減する必要がある場合の検査(腫瘍マーカー)のうち,「α-フェトプロテイン(AFP)」,「癌胎児性抗原(CEA)」の費用を患者から徴収することも可能である。