Diagnosis Procedure Combination
診断群分類とは患者を,マンパワー,医薬品,医療材料などの医療資源の必要度から,統計学的に意味のある500から2,000程度のグループに整理し,分類する方法である。具体的には患者を病名と行われた医療行為,さらに合併症の有無などの重症度に関連した情報を用いて分類する方法である。その嚆矢となったのはFetterらによって開発され,1982年からアメリカのMedicare/Medicaidの包括支払い方式の基礎となったDiagnosis Related Groups(DRG)である。
1990年代後半に我が国でもDRGの適用可能性が検証されたが,より日本の診療報酬制度に適した診断群分類が必要であるという認識のもと厚生労働省の研究班によって開発されたのがDiagnosis Procedure Combination(DPC)である。DPCの構成は,14桁コードになっており,最初の6桁が病名,そして入院時年齢・出生児体重,手術の有無と種類,その他の手術処置等の有無,併存症の有無,その他重症度に関連する要因の有無がそれぞれコード化される。
DPCに基づく支払いは包括部分と出来高部分に分かれており,1,000点以上処置や手術は出来高払い,その他は1日当たり包括払い方式になっている(これをDPCに基づく1日当たり包括払いPer Diem Payment Systemという意味でDPC/PDPS方式という)。なお,1日当たり包括支払い部分については,入院期間Ⅰ,Ⅱ,Ⅲが設定され入院経過とともに徐々に点数がさがるsliding scaleが採用されている。また,入院期間Ⅲを過ぎると出来高払いとなる。現時点でDPCの包括支払い方式の対象となるのは急性期病院のみであるが,精神領域や慢性期に対応したDPCの開発も進められており,今後全診療領域に一般化される可能性もある。ところで,医療技術の進歩に合わせて分類の精緻化が必要になるが,この問題に対応するために現在CCP matrixという新たな分類手法が検討されており,2016年のDPC分類から試行的に採用されている。
DPCにおける支払いについては,基礎係数,機能評価係数Ⅰ,機能評価係数Ⅱが別途設定されており,この合計を包括支払い部分に乗じたものが各施設への支払額になる。このうち基礎係数は「大学病院本院群」,「DPC特定病院群」,「DPC標準病院群」に分かれている。機能評価係数Ⅰは施設がとっている加算など出来高で別途設定されているものを係数に置き換えたもの,機能評価係数Ⅱはその病院の役割を係数化したものである。機能評価係数Ⅱは,保険診療係数,複雑性係数,カバー率係数,効率性係数,地域医療係数,救急医療係数が設定されており,各施設の実績値によって設定される。
令和4年度現在でDPC対象病院は1,764施設,病床数換算で483,425床になっている。DPC病院から提出されるデータは毎年病院名とともにその実績値が公開され,医療提供体制の在り方を考えるうえでの貴重な情報源となっている。地域医療構想や地域医療計画への応用,さらにはDPCデータを用いた臨床研究など,その応用範囲は徐々に拡大してきており,世界でも有数の医療ビッグデータの一つとなっている。