Care Mix
ケアミックスとは,同じ病院の病棟あるいは病室単位に,急性期医療と慢性期医療あるいは介護療養機能を併せもつことの総称。Care Mixは,和製英語で,合衆国で研究が進められ老人や障害者の医療保険であるメディケア制度と医療扶助制度であるメディケイド制度に1980年代に導入されたCase Mix分類による診断名手術・処置別予見支払方式であるDRGなど(日本のDPCが制度立案のため参考にした)から連想された日本独自の造語である。
1983(昭和58)年2月に老人診療報酬制度が創設されるまで,わが国の一般病院の一般病棟の看護方式は,病棟別の看護体制をかたくなに認めてこなかった。例えば,患者4人に対して1人の看護配置とか,3人に1人,2人に1人といった病棟別看護傾斜配置は認めないという立場であった。これは,看護職の配置状況によって入院時の看護料を算定できるという診療報酬設定方式で,当時,病棟別看護傾斜配置を認めると,不正請求の温床となるのではないかと考えた官僚の発想による理屈であろう。入院患者一人ひとりの看護必要度を科学的に測定出来ない時代には,病院毎に,A病院の一般病棟の全てが3人に1人,B病院では2人に1人というような状態でしか看護料を算定できない仕組みにしていたことになるが,病院経営上は看護職を多く配置すれば多くの看護料が算定できることになるため,あながち悪弊があるとは考えられてこなかった。しかし,医学医術の進歩,看護職の労働条件改善,長期入院する高齢者の増加,平均在院日数短縮化政策の徹底などにより,病院毎に全ての一般病床(一時期「その他の病床」というわかりにくい病床名であった)を同一看護体制にしておくことの弊害が徐々に認識されるようになった。
もともと老人病院は看護職が集まらず,看護助手や介護職員により対応せざるをえなかったが,このような現状を公認する介護職員を法定化した介護力強化病院が老人診療報酬上誕生し,この制度が療養型病床群という医療制度に再編,さらに2001(平成13)年3月1日に施行された改正医療法は,それまで結核病床,精神病床,その他の病床とされていた病床の種別のうち,「その他の病床」を,主に慢性疾患の患者が入院する「療養病床」と主に急性疾患の患者が入院する「一般病床」とに,再区分し,それまで同一だった「その他の病床」に,それぞれに異なる人員基準や施設の構造設備基準が新たに設けられた。
その結果,今日では,慢性期患者用の病棟と,急性期の患者を収容する病棟とを併せ持つ施設形態のことをケアミックス病院と呼ぶようになった。地域医療構想で高度急性期,急性期,回復期,慢性期に病床区分を再編させようという政策から,実際には,ICU,CCU,HCUなどの特殊病床,緩和ケア病棟,回復期リハビリテーション病棟,地域包括ケア病棟,および療養病棟を同一病院内に配置することが一般的になりつつあり,いずれケアミックスが当然視されるようになると考えられる。