新専門医制度

New Training and Certifying System of Medical Specialists in Japan

 専門医とは各専門領域において,国民に標準的で適切な診断・治療を提供できる医師とし,専門医制度を構築するにあたっては,上記の専門医の意義を正しく反映するものでなければならないとされている。また,専門医制度では,各領域のあるべき専門医としての医師像を定め,医師として共通の基本的能力の修得は言うに及ばず,各領域において備えるべき専門的診療能力,専門医の育成・更新過程を明示するとともに,各領域を通じた標準化が求められるとされている。

 新専門医制度は,基本19領域(内科,外科,小児科,産婦人科,精神科,皮膚科,眼科,耳鼻咽喉科,泌尿器科,整形外科,脳神経外科,形成外科,救急科,麻酔科,放射線科,リハビリテーション科,病理,臨床検査,総合診療科)と,サブスペシャルティ領域からなる。

 一般社団法人日本専門医機構は,厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会最終報告(2013年4月)」を受け,「国民及び社会に信頼され,医療の基盤となる専門医制度を確立することによって,専門医の質を高め,もって良質かつ適切な医療を提供すること」を目的として,我が国の専門医の育成と認定を統一的に扱う第三者機関として2014年7月に設立された。

 同機構において,新たな専門医の認定・更新基準や養成プログラム・研修施設の基準を作成し,専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行っている。

 当初,2017年4月からのスタートを目指して,新たな専門医養成の準備を進めてきたが,地域医療崩壊に対する関連団体からの強い懸念の声とともに機構のガバナンス不足に対する指摘や,制度設計や運用に対する柔軟な対応を求める各学会からの強い要望等を受け,同機構の理事会はその施行開始を1年間延期した。2016年12月の社員総会において,各領域学会の責任と自主性を出来る限り重視するという基本方針に則り,「専門医制度新整備指針」を策定した。

 同指針において,日本専門医機構は,①各基本領域学会の各制度及び各基本領域学会と,サブスペシャルティ学会で構築するサブスペシャルティ学会専門医検討委員会の各制度に助言・評価すること,②サブスペシャリティー学会専門医および,そのあり方について今後検討を行い,3年を目処として見直しを行うこと,③各専門医制度の(1)標準化および質の担保,(2)検証,(3)専門医(更新者を含む)および研修プログラムの審査と認定を行うこと,の3つの役割を担うこととした。

 厚生労働省は,2017年4月に「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」を立ち上げ,地域医療関係者の参画のもと,地域医療に求められる専門医制度の在り方について検討を進め,日本専門医機構に対して地域医療への配慮を求めた。その結果,日本専門医機構は,地域医療従事者等に配慮したカリキュラム制の導入や,地域の中核病院等であっても基幹病院となれる基準の設定など専門医制度新整備指針の見直しを行った。

 また,新専門医制度開始後も良質な医療を提供する体制に責任を有する国の立場から,医師のキャリアや地域医療に対する配慮が継続的になされるような,安定した仕組みの構築が求められたことから,2018年に医師法が改正され,①国から日本専門医機構等に対し,必要な研修機会を確保するよう要請する権限,②都道府県の意見を聴いた上で,国から日本専門医機構等に対し,地域医療の観点から必要な措置の実施を意見する仕組み,の2点が創設された。

 本改正法に基づき,医道審議会医師分科会の下に医師専門研修部会が設置され,同部会の審議結果を踏まえ,厚生労働大臣から日本専門医機構等に対し,専攻医の都市への集中抑制や柔軟なカリキュラム制などを内容とする意見・要請を定期的に通知している。

 特に,専攻医の採用数の上限設定(シーリング)については,2020年度の専攻医募集から,より実態に即したシーリングの設定を行うため,厚生労働省が公表した都道府県別診療科別の必要医師数を基に,日本専門医機構が足下の医師数が必要医師数を上回る都道府県・診療科に一定のシーリングを設定している。

 また,今後,高齢化に伴い,特定の臓器や疾患を超えた多様な問題を抱える患者が増えることから,総合的な診療能力を有する医師の専門性を評価し,「総合診療専門医」として新たに位置付け,他の領域分野とともに2018年度から養成が開始されている。

 日本専門医機構は,サブスペシャルティ領域専門医研修について,2020年6月に研修細則を策定し,2021年4月の開始を目指して準備をしてきたが,新型コロナ感染の拡大により,1年間延期して2022年4月から認定を開始している。現在は24領域にまで拡大している。

【関連用語】

日本専門医機構 (Japanese Medical Specialty Board)

 一般社団法人日本専門医機構は,厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会最終報告(2013年4月)」を受け,「国民及び社会に信頼され,医療の基盤となる専門医制度を確立することによって,専門医の質を高め,もって良質かつ適切な医療を提供すること」を目的として,我が国の専門医の育成と認定を統一的に扱う第三者機関として2014年7月に設置された。同機構の行う事業は,以下の4点である。

  1. 専門医の育成に関する事業
  2. 専門医の認定に関する事業
  3. 専門医制度の評価に関する事業
  4. その他目的を達成するために必要な事業

 同機構において,新たな専門医の認定・更新基準や養成プログラム・研修施設の基準を作成し,専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行っている。

 2014年7月には,各診療領域の共通の整備指針となる専門医制度整備指針を策定し,現在,診療領域ごとの認定・更新基準の作成を進めている。また,同機構は専門医の質や分布等を把握するため,専門医等に関するデータベース構築を進めている。

 当初,2017年4月からのスタートを目指して準備を進めてきた「新たな専門医養成の仕組み」については,地域医療崩壊に対する関連団体からの強い懸念の声とともに機構のガバナンス不足に対する指摘や,制度設計や運用に対する柔軟な対応を求める各学会からの強い要望等を受け,新理事会としてその施行開始を1年間延期することを決定した。

 2017年度については,基本18領域(内科,外科,小児科,産婦人科,精神科,皮膚科,眼科,耳鼻咽喉科,泌尿器科,整形外科,脳神経外科,形成外科,救急科,麻酔科,放射線科,リハビリテーション科,病理,臨床検査)については各学会において施行し,また,総合診療専門医については何らかの暫定措置を施行することとされた。

 2016年12月の社員総会において,各領域学会の責任と自主性を出来る限り重視するという基本方針に則り,以下の理念を盛り込んだ「専門医制度新整備指針」が承認された。

1.専門医像
  1. 各専門領域において,国民に標準的で適切な診断・治療を提供できる医師であること。
2.専門医制度
  1. 各領域のあるべき専門医としての医師像を定め,医師として共通の基本的能力の修得は言うに及ばず,各領域において備えるべき専門的診療能力,専門医の育成・更新過程を明示するとともに,各領域を通じた標準化が求められること。
3.各領域学会
  1. 基本領域学会専門医(専門医の名称については今後検討する)育成のため,(1)専門医育成のプログラム基準の作成,(2)専攻医募集と教育,(3)専門医認定・更新の審査,(4)研修プログラムの審査をおこなう。
  2. サブスペシャルティ学会の専門医制度(専門医の名称については今後検討する)は基本領域学会がサブスペシャルティ学会と協同して,サブスペシャルティ学会専門医検討委員会(仮称)を構築し,サブスペシャルティ学会専門医育成のための(1)専門医育成のプログラム基準の作成,(2)専攻医募集と教育,(3)専門医認定・更新の審査基準,(4)研修プログラムの審査を含む整備基準,モデル研修プログラムを作成して日本専門医機構に提出し,日本専門医機構の承認を得たうえで,当該サブスペシャルティ学会専門医制度を運用する。
4.日本専門医機構
  1. 各基本領域学会の各制度及び各基本領域学会と,サブスペシャルティ学会で構築するサブスペシャルティ学会専門医検討委員会の各制度に助言・評価する。
  2. サブスペシャリティー学会専門医および,そのあり方について今後検討をおこない,3年を目処として見直しをおこなう。
  3. 各専門医制度の(1)標準化および質の担保,(2)検証,(3)専門医(更新者を含む)および研修プログラムの審査と認定を行う。