医療介護総合確保推進法

Draft Act on Amendatory Law to the Related Acts for Securing Comprehensive Medical and Long Term Care in the Community

 これまで,社会保障改革の全体像や必要な財源を確保するための消費税を含む税制抜本改革の基本方針が示されるとともに,その具体化のための検討が進められてきた。2012年8月に議員立法により成立した社会保障改革推進法にもとづき,有識者による社会保障制度改革国民会議が行われてきたが,2013年8月に報告書が取りまとめられた。その審議の結果等を踏まえて,2013年12月に「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」が成立した。その「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」に基づく措置として,効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに,地域包括ケアシステムを構築することを通じ,地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため,医療法,介護保険法等の関係法律について所要の整備等を行うこととなり,「地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律」の題名及び内容が2014年6月に改正された。

 この法律の正式名称は,「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」であり,概要は以下の通り。

  1. 新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)
    1. 都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携,在宅医療・介護の推進等)のため,消費税増収分を活用した新たな基金(地域医療介護総合確保基金)を都道府県に設置
    2. 医療と介護の連携を強化するため,厚生労働大臣が基本的な方針を策定
  2. 地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
    1. 医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期,急性期,回復期,慢性期)等を報告し,都道府県は,それをもとに地域医療構想(ビジョン)(地域の医療提供体制の将来のあるべき姿)を医療計画において策定
    2. 医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付け
  3. 地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)
    1. 在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ,予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し,多様化
    2. 特別養護老人ホームについて,在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化
    3. 低所得者の保険料軽減を拡充
    4. 一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ(ただし,一般の世帯の月額上限は据え置き)
    5. 低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加
  4. その他
    1. 診療の補助のうちの特定行為を明確化し,それを手順書により行う看護師の研修制度を新設
    2. 医療事故に係る調査の仕組みを位置づけ
    3. 医療法人社団と医療法人財団の合併,持分なし医療法人への移行促進策を措置
    4. 介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を2015年度から2016年度に延期)

 公布日は2014年6月25日。ただし,医療法関係は2014年10月以降,介護保険法関係は2015年4月以降など,順次施行された。地域医療介護総合確保基金の対象事業は,以下の通り。

  1. 地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設又は設備の整備に関する事業
  2. 居宅等における医療の提供に関する事業
  3. 介護施設等の整備に関する事業(地域密着型サービス等)
  4. 医療従事者の確保に関する事業
  5. 介護従事者の確保に関する事業

【関連用語】

地域医療介護総合確保基金(Fund for Medical and Long-Term Care)