Comprehensive Strategy to Accelerate Dementia Measures (New Orange Plan)
我が国における認知症の人の数については,2025年には約700万人前後となり,65歳以上高齢者に対する割合は約5人に1人まで上昇するとの推計もある。
このような状況を踏まえ,認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができる環境づくりを目指して,「認知症施策推進5か年戦略」(オレンジプラン)(2012年9月厚生労働省公表)を改め,関係府省庁と共同して,2015年1月に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定された。
新オレンジプランでは,団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え,認知症の人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指し,以下の7つの柱を設定し,施策に対応する具体的な数値目標を設定している。
- 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
- 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
- 若年性認知症施策の強化
- 認知症の人の介護者への支援
- 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
- 認知症の予防法,診断法,治療法,リハビリテーションモデル,介護モデル等の研究開発とその成果の普及の推進,
- 認知症の人やその家族の視点の重視
新オレンジプランに基づく施策として,本人や家族が小さな異常を感じたとき速やかに適切な支援機関に相談することができ,早期に認知症の鑑別診断が行われ,迅速に適切な医療・介護サービス等を利用できるように,できる限り早い段階からの支援体制の構築が必要である。そのため複数の専門職が,認知症が疑われる人や認知症の人と,その家族を訪問し,認知症の専門医による鑑別診断等を踏まえて,観察・評価を行った上で,家族支援などの初期の支援を包括的・集中的に行い,自立生活のサポートをする「認知症初期集中支援チーム」を2018年度に全ての市町村に配置することとしている。
また,認知症の人ができる限り住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには,容態の変化に応じ必要な医療・介護等が有機的に連携したネットワークによる支援を行うことが重要である。そのため,地域の実情に応じて医療機関,介護サービス事業所や地域の支援機関の間の連携のコーディネートや認知症の人やその家族への相談支援等を行う「認知症地域支援推進員」を2018年度に全ての市町村に配置することとしている。さらに,身近なかかりつけ医の認知症に対する対応力を高め,認知症サポート医の支援を受けつつ,地域で必要となる医療・介護等の連携を確保し,鑑別診断や行動・心理症状(BPSD)への対応等に当たり,必要に応じて適切な医療機関に繋ぐことができるようにすることが重要である。そのため専門的な知識を有する医師等が在籍し地域における治療の拠点となる「認知症疾患医療センター」等の専門医療機関を2017年度末に500箇所整備することとしている。
このほか,誰もが認知症とともに生きることとなる可能性があり,また,誰もが介護者等として認知症に関わる可能性があることなど,認知症は皆にとって身近な病気であることを社会全体で正しく理解する必要がある。そのため,認知症に関する正しい知識と理解を持って,認知症の人やその家族を支援する「認知症サポーター」を2017年度末に800万人養成することとしている。なお,量的な養成だけでなく,認知症サポーターに様々な場面で活躍してもらうことにも重点を置き,認知症サポーター養成講座を修了した者のステップアップを図るための手引きや参考材料等を作成し,修了した者に地域の見守り活動や,認知症の人やその家族が地域の専門家と相互に情報を共有しながら,お互いを理解し合う「認知症カフェ」にボランティアとして参画してもらう取組みなどを,地域の実情に応じて進めることとしている。これらをはじめとした各種の取組みによって,新オレンジプランの総合的な推進を図っている。