高齢者の医療の確保に関する法律

Act on Assurance of Medical Care for Elderly People Article

 「医療制度改革大綱」(2005年12月)において,2015年度には2008年度と比較して糖尿病等の生活習慣病有病者・予備群を25%減少させることが政策目標として掲げられ,中長期的な医療費の伸びの適正化を図ることとされた。

 この考え方を踏まえ,生活習慣病予防の徹底を図るため,老人保健法が「高齢者の医療の確保に関する法律」(高齢者医療確保法)に改正され,2008年4月より,内臓脂肪の蓄積等に着目した生活習慣病に関する健康診査(特定健診)及び特定健診の結果により健康の保持に努める必要がある者に対する保健指導(特定保健指導)の実施が,医療保険者(国民健康保険・被用者保険)に義務づけられた。特定健康診査・特定保健指導は40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者が対象となる。

 成人の健康の維持向上・回復を目的とした保健指導・栄養指導は,医師法,保健師助産師看護師法,栄養士法,高齢者医療確保法,健康増進法,労働安全衛生法,健康保険法,学校保健安全法などにその法律上の根拠を有する。また,健康増進事業実施者は,健康教育,健康相談その他国民の健康の増進のために必要な事業を積極的に推進するよう努めなければならないことが健康増進法第4条に定められている。

 これらの規定により,医療保険者も,被保険者や被扶養者に対する健診・保健指導を含めた保健事業にも積極的に取り組むことが求められている。

 特定健診・特定保健指導は,こうした保健事業のうち,高齢者医療確保法に基づき医療保険者の義務を明確にした。なお,特定健診・特定保健指導の実施に当たっては,高齢者医療確保法以外の関係各法に規定する健診や事業の活用を考慮するとともに,市町村,事業主,医療保険者においては,健康課題の分析結果に基づき,利用可能な社会資源を活用した積極的な保健事業の展開が望まれている。

 一方,高齢者医療確保法に基づき,2008年4月から新たな高齢者医療制度として,75歳以上の高齢者等を対象とする「後期高齢者医療制度」が創設され,現役世代と高齢者の費用負担のルール(給付費の約5割が公費,約4割が現役世代からの支援金,約1割が高齢者の保険料)を明確化するとともに,都道府県単位ですべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合を運営主体とすることにより,運営責任の明確化及び財政の安定化を図ることとされた。

 後期高齢者医療の保険料は世帯人員・所得などに応じて決まり,市町村が徴収するが,財政運営は後期高齢者医療広域連合が行い,後期高齢者医療広域連合の財政リスクの軽減については,国と都道府県が共同して責任を果たす仕組みとなっている。

【関連用語】

特定健診・保健指導(Specific Health Checkups and Specific Health Guidance),後期高齢者医療制度(Medical Care System for Elderly in The Latter Stage of Life)